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研究会報告

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数実研連続講座「量・比例・関数《(2009/11/3)  東京都:国立オリンピック記念青少年総合センター

【単位量あたりの大きさ】 S先生の実践
(講評)子どもの身近な経験や実体験を基に授業が進められており、「速さ《や「速さ《について着実に児童の力が着く授業の組み方だと感じた。S先生のお力を感じる実践報告であった。

(密度の実践について)
● 導入では「混み具合《という観点で、エレベーターの中の状態を比較して、混み具合の概念を児童に考えさせた。(混み具合に関する児童の意見:人が大勢いる蒸し暑くなる感じ・狭いと窮屈になる感じ、など)
● エレベーターの中の混み具合に関して、最初は人の頭数にだけ目がいって人数の多い所が混んでいると答える児童がいたが、この時間の議論を通して「床面積あたりの人数が多い方が混んでいる《という事実を突き止めた。
● (まとめ)単位量あたりの大きさは、「比べられる量÷単位量《・「比べられる量/単位量《と定義された。
● 第2段階では、大阪市と守口市の人口密度を比較した。この時間も単純に人口が多い方の密度が高いと予想する児童が見られた。そこで、前回見つけた法則を使って検証した。
● 割り算を行い、おおよその人口密度を求めることができた。ここで、割り切れい数をどのように処理すべきかが話題となった。繰り上げ・繰り下げの概念を使って処理をした。
● 第3段階では、広さの違うサツマイモ畑について、どちらがたくさん収穫できたかという議論を行った。

 この後、学力を定着させる為に練習問題を解かせている。本質的に同じ趣旨の質問を場面や状況を変えて何度も問うことで、子どもたちは問題の本質を見抜く眼を養い、密度に関する理解を深め、力をつけることができたようだ。

(速さの実践について)
● 導入では「どういう時に速さを感じるか《という質問から、児童の生活の中の速さについて話し合いを行っている。(「速さ《に関する児童の意見:自動車の速さ・バスの速さ・競争する時の速さ・時速という言葉を聞いたことがある、など)
● 第1段階では「道のりが同じ場合にどちらが速い?《という質問でいくつかの表を提示し、児童に速さの概念を考えさせている。この質問のねらいは、同じ道のりを進む時に、時間が短い方が速いと分かれば達成されたことになる。
● 次に「では速さはどのようにして求めれば良いか?《とい質問をした。ここでは、秒単位で問題を組み立て「時間を距離で割ることで速さが求められる《ことを確認した。最初はこの法則を理解できない児童も居たが、教師が丁寧に説明することで児童の理解を助けることができた。
● 第2段階では、時速の概念について理解を深めさせた。問題では、新幹線ひかりとやまびこ号の速さを比較した。理解が難しい児童には、数直線を書いて比較をさせた。時間の単位が変わっても、本質的に計算の方法が変わらないことをこころでは抑えた。
● 第3段階では、身近な速さ(時速30キロメートルの道路標識)について一体どれぐらいの速さなのかを児童に想像させた。
 @ 分速・秒速と色々な速さで求めることを行っている。
 A 健脚な男子児童に時速30キロメートルの速さを実演して貰い、その速さを実体験させている。
 B チーターやカンガルー・蜘蛛など、生き物の動くスピードを例に出して比較学習を行っている。
● 第4段階では、練習問題を解きながら、「速さ・時間・距離《の関係を図など表現して抑えている。まとめの段階である。ここまで実体験や身近な事例を通じて速さの本質的な要素を学習してきたので、ここでは児童に工夫をさせながら問題を解かせ、理解を深めさせた。

【量を実感するひまわりの種の授業(2年生・大きな数)】 G先生の実践
(講評)「一日一日、ついででいいから子どもたちに『ああ楽しかった。』と言わせる授業を創りたい。《授業を提案したG先生の言葉である。数実研の実践は、身近な生活から教材を見つけ、児童のつまずきを基に授業を創り上げる。そこに極意がある。今回の実践で報告は、まさにそれが具体化された見事な内容であった。

(実践のきっかけと全体の流れ)
● G教諭が勤めるK小学校には学校農園がある。そこには5年生が育てていたひまわりがあった。このひまわりの種を数えることで、1000よりも大きい数を学習しいと考え、本実践がスタートしている。
● この実践には、「たった一粒の種が成長することで、このようにたくさん実を付けるひまわりの生命力を児童が感じること《・「その驚きを大切にしながらが、楽しく1000よりも大きい数を学んで欲しい《というG教諭の願いがある。
● 数を数える段階では、児童にプラスチックの受け皿と電卓を手渡してひまわりの種を数えさせた。10ずつのまとまりを作り、それをまた10ずつ集めて100の固まりをつくり、クラス全体で協力して全ての種を数え切ることができた。
● 同様の実践を1年生でも行ったが、一粒ずつ数えていく内に全体の数を把握し切れなくなった。やはり2年生にはこれまでの積み重ねがあるので、全てを数えきることができたのだと感じる。
● ワークシートには、ひまわりの花を取った時の様子が絵で記録させた。どの絵も躍動が溢れていた。実体験に伴う授業だったので、多くの児童がいきいきと学習に取り組むことができた。


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