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研究会紹介

創立の理念


創立の理念

 創立大会で確認し合った活動方針は、当時の情勢を踏まえながら将来を展望したもので、数実研の体質と性格を将来にわたって規定づける重要なものでした。
 そこでは次の3つの柱が提起されました。(項目のみ)
(1) 数学教育を科学に育てる研究と取り組もう。
  @研究の自由
  A原理・法則の創造
  B研究の専門化
  C集団研究体制の確立

(2) 研究教育活動の層を厚くし、国民教育運動を幅広く発展させよう。
  @教師の幅広い結集
  A国民教育運動の推進
  B各種研究会の開催
  C発表活動の活性化

(3) 組織の民主的強化と拡大をはかろう
  @地域ならびにサークル組織の強化・拡大
  A各種機関における集団責任体制の確立
  B個人・サークル・地区組織と会の中央との連絡の緊密化

 最初の(1)の柱は、数実研がめざす研究方向を示したもので、算数・数学教育の “科学化”は、創立以来今日まで一貫して掲げてきた不動の基本路線です。その具他的な進め方については、次のように示されています。

◆ 教育の方法は、同じ内容でも違った接近のしかたがあることを容認しあい、独創的な内容や方法を豊富に行った上で子どもの認識の共通点に到達する過程を踏むことは欠かすことができない条件です。

◆ 多様で豊富な実践によって矛盾を明らかにし、更にそれを克服する独創的なプランや仮説を実践によって検証していくといった過程で、子どもの認識に適応する一般命題、つまり数学教育の原理や法則を創造して行くことが必要です。

 このように、数実研では何よりも現場の実践・子どもの認識の実態が、すべての研究活動の基礎になっています。現場実践を踏まえ、そこから生み出された主張や命題でない限り、それは単なる空想の域にとどまり、理論とはなり得ない厳しさが伝統になっています。


算数・数学教育の科学化を目指す数実研の研究領域

 こうした方向で実践研究が積み上げられ、その集約からひき出された算数・数学教育の一般命題も、次第に質の高いものへと発展しました。そして創立してから6年後の第10回大会(当時の全国大会は夏と冬の年2回開催)では、それまでの各分野の研究を集約し、“科学化”を目指す研究として次の1)〜7)の領域が確認されました。その後の情勢の変化・発展に対応して更に7)、8)が独立の領域となり、1986年以降、当時の学校の荒れやいじめ・不登校・子どもの自殺など、困難な教育状況を打開すべく算数・数学を軸に他教科の内容にも及ぶ総合学習が提起され、次第に多くの実践が展開され、高度な多くの成果を挙げるようになりました。
1) 毎日の実践
  毎日の実践:教室の内外における教育実践の中から、数学教育の内
  容・方法上の問題点や、それに関わる地域社会の問題点などの諸矛
  盾を解明する。
2) 認識論・認知論
  子どもの認識の発展に関する心理学的な研究、並びに認識の科学的
  研究
3) 国際動向
  外国の歴史的、社会的、経済的背景を伴った算数・数学教育の動向
4) 数学史
  算数・数学の歴史的な発展過程の研究
5) 社会科学との関連
  算数・数学教育に対する国民の要求と社会の発展が目指す方向に関
  する研究
6) 教材構成と教育課程
  数・量・代数・関数・図形・幾何・論理・解析・確率・統計などの算数・数
  学教育の直接的な内容と方法、更に教育課程に及ぶ研究
7) 数学の学習
  算数・数学教育の観点から数学や関係する諸科学そのものの学習や
  再検討
8) 総合学習・実践的課題学習
  これまでの「子ども達の実践する算数・数学」の実践研究を集約・発展
  させ、「現実の実践課題における算数・数学の活用と発展的認識」、「文
  化しての算数・数学」、「算数・数学を軸に他教科にまたがる総合学習」
  の教材開発と実践

 特に2)の認識論や、5)の社会科学との関連、9)の総合学習は、他には例を見ない数実研独自の研究領域となっています。

 さて、こうした“科学化”を目指しての研究が、少人数のグループで実現できるはずはありません。“科学化”は個々の実践研究の客観性を確かめ、一般性を追及することによって達成されるものです。そのことは必然的に運動への発展が要求されます。全国各地からの研究への参加と、それを基礎にした研究の集約は欠かすことのできない条件です。

 その運動論が(2)の柱です。一人一人の教師が主体性を持った、専門性の高い研究者になると同時に、サークル活動や地区集会など、大小さまざまな研究集会を組織して交流しあい客観性を確かめ合うことが重要になります。これが数実研の活動の原点であり、研究の売り込みや勢力拡張とは無縁です。
 (3)の柱は、こうした研究と運動の両面にわたる数実研の性格を堅持し、基本路線を進めるための体質を規定したものといえます。創立大会では、現場の教師と大学などの研究者との全くの自発性・任意性に基づいて組織される民間研究団体というものが、その民主的運営をどうしなければならないかについて真剣に討議されました。会の内部に特定の権威者をつくったり、会の中央から研究成果と称するものを流したりして、一般会員はそれを下請け的に実践する、といった消費者的参加に陥ることを厳しく警戒することで共通理解に達しました。
 従って数実研では研究についても運動についても、会員一人一人が算数・数学教育の科学化を担う研究者として、すべて平等の立場で参加することが大前提です。


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