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研究会報告

今までの全国大会報告

第59回全国大会 (2009/8/8〜9) 東京都:国立オリンピック記念青少年総合センター

 

<大会内容 8月8日(土)(大会1日目)>

◎研究講座(A〜D)・教材づくりの視点を実践を交えて

A 数と計算(小学校) :森川みや子(東京)
 新学習指導要領が算数科では移行が始まっています。超過密の内容で中にはあっぷあっぷしている子どもも居ると聞きます。こういった中で、どの子も算数大好きとを輝かせる数と計算の指導はあるのでしょうか。…実は数実研ではここにメスを入れた指導法を研究しています。これを紹介します。

B 量と測定(小学校):三角 富士夫(福岡)
 これまでの教科書の<量と測定分野>には、次のような問題があった。
・教材として、日常現実から遊離した作為的な素材、紙上での問題解決が多い。
・定義の説明に使う言葉が上明確である。
・単位や測定器具を生かした生活現実の中での実測体験が乏しい。
 これに加えて、
・「量の4段階指導」の形をとりいれた授業もいまだに行われている。
 こうした授業の問題性を克?して、教材や展開をどのように工夫していくか、福岡で取り組んできた実践事例を紹介したい。
 主として、<長さ>、<かさ・体積>、<速さ>をとりあげたい。

C 図形(小学校) :森川 幾太郎(福島・福島大学)
 日本の小学校における図形教育には次の特徴がある。
○小学校1年生から図形教育が開始される
 (「算数《が「算術《ではなく、「小学校数学《としての性格をもつ一つの証拠)
○1年生を除いて、平面図形から立体図形へ、という流れで学習が構成されている。
 (立体図形と平面図形とが一体化されて指導されていない、という問題を生む)
○平面図形では、作図を行うことを学習の中心課題にして学習が進む
 (「基礎から応用へ《という「積み上げ方式《学習と結びつき図形学習をつまらなくさせる)
  (そのことが、かって、図形学習を論理中心主義に走らせることになった)
○そして、直線図形中心主義+作図条件探求中心主義が図形分野の教育課程編成の理念になっている。
 (対称図形を取り上げていながら、そのことに対する意識が弱い・そのことが図形学習を貧困にしている)
○平面図形についての教育課程の柱は、
  図形の存在、決定条件 → 作図条件の探求と作図 → 図形の相互関係
  を理念にして構成されている。

D 関数(中学・高校) :瀬尾 祐貴(東京)
 全国的な学力調査の結果をもとに、また、指導内容の変遷にふれることで、現在の関数教育の課題を考えます。岡部による「日常性の数学《が、そのあり方を変える一つの大きな動きになるのではないかと考えています。

◎全体講演 「世界の教育改革の動向と日本の教育《 石坂 和夫
(岐阜聖徳学園大学/大学院吊誉教授、アメリカ教育学会前会長、日本グローバル教育学会元会長)
 世界の教育課程の動向を見据え、世界の国々では算数・数学教育をどう位置づけているか、数学教育で何を目ざしているか、今回の指導要領の特徴と世界的な意味、目指すべき学力論などについて、以下の内容にふれながらお話ししたい。
・  世界の教育改革は、どのような事情で断行されたか
・  覇権国家の教育改革の事例:米国――スプートニックショック教育改革、ポストスプートニック教育改革(AMERICA 2000、NCLBなど)、大学接続とハイスクールのカリキュラム 教科書事情(K-12)
・  義務教育段階:カリキュラム内容と教授法の事例:掛け算九九を教えない国
・  高等学校:湾岸諸国の数学・理科教育の事例
・  フィンランドの教育導入を検討している事例:米国テキサス州、ベトナムなど(今後増えることが予想される)
・  数学・理科教育支援プログラム(アフリカ、中南米):ODA
・  ユネスコのカリキュラム支援コンサルタント経験からの事例
・  国際数学調査(IEA)とカリキュラム
・  新しい欧州におけるEDC(Education for Democratic Citizenship 民主的市民の育成)フォーマルカリキュラムの動向及びボローニア・プロセス(国境を越えた学術交流のためのカリキュラム:33カ国参加、転編入、単位の互換、資格認定(accreditation 認定協会)、教授媒体(medium of instruction ― 言語, ブラジル人児童生徒など我が国の問題でもある)
・  世界のカリキュラムモデル:欧州型、米型、旧ソ連型及び?民地経験国の情況
・  東南アジアの国際化とGATS (General Agreement on Trade in Services) ?シンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、香港、中国などの事例
・  諸外国の見る日本国の教育
私の授業・「ここまで子どもを伸ばせる《という、子どものもっている可能性にチャレンジした実践報告です。

◎私の授業

【小学校分科会】
 子どもが動いて発見した「単位あたり量《 :今里 明美(福岡)
 シート乗りゲームでのこみぐあい調べや、先生達の車の燃費調べ、果物や野菜を切ったり水に浮かべたりしての密度調べなどを通して、子ども達が体感しながら「単位あたり量《を学んでいきます。また、「速さ《では一輪車、竹馬、自転車などの速さを自分たちで見つけたり、ドミノトラックや、ミニ列車を走らせて問題作りにチャレンジしたりして、友だちと協力しながら学習するという、楽しく活動的な授業作りの実践を報告します。

【中学校・高校分科会】
 「放物線の活用《・「万華鏡《 :小関 広明(山形)
 私達の身の周りには、数学的な工夫が活かされている物や、数学的な規則性が潜んでいる事象が数多く存在します。私達はそれらを目にはしていても、深く考えたり、追究したりする機会はないままに過ごしています。それらを教材として授業で取り上げていくことは、子供達に数学の楽しさ、面白さ、そして美しさを実感させ、さらに深く追究していこうという姿勢を育てていくのではないかと思います。今回は、第一学年で行った「万華鏡と数学《、第三学年で行った「放物線の活用《の2つの授業実践を紹介したいと思います。

◎小さな輪の集い  「北から南から《数実研 葛飾サークル
   北から南から数実研の大会に集まったみなさん、「小さな輪の集い《で交流を深めましょう。自分の子ども(教え子)たち自慢、学校自慢など○○自慢や、私のがんばりなどいろいろな話をここで披露しませんか。

◎星空を見る会  〜午後8時に見える星空を楽しもう〜 阿部 良春(東京)
  @ 星座早見盤を使って、どんな星座や一等星が見えるか、探そう。
  A 実天で、〔北極星〕を探そう。
  B 方位が分かったら、〔春の大曲線〕、〔夏の大三角〕を見つけよう。
  C 〔土星〕や〔木星〕を探そう。
  D 星のナンバーワンを、探そう。(明るさ・温度・大きさ・距離)
  E 天の川の流れ方を確認しよう。
  F 肉眼で見える、一番遠い天体〔アンドロメダ星雲〕を見よう。

 

<大会内容 8月9日(日)午前の部(大会2日目)>

◎実践交流分科会(E〜H)・日々の教室で行われている授業の交流を通して、
 @ 指導すべき数学的内容は何であるかを明らかにする。
 A 子供たちの学習の様子を、その認識やつまずきの実態も含めて明らかにする。
 これらを目的とする分科会です。
 発表者への質問だけでなく、参加される皆様お一人おひとりから、取り組まれた実践の様子も、発言の中でご報告ください。 >


幼児・小学校低学年・特別支援
1年生 初めてのたしざん・ひきざん  :丸山 信子(東京)
入学して初めて習う「さんすう《との出会い。
「数の量《と「数字《を結びつけ、「足す《「引く《という意味を知り、式に表すこと、問題を作ることを、楽しんで学べるように工夫してきました。
「たしざん《の時は「さんすうだーいすき!《といっていた子どもたちも、「ひきざん《になると、首をかしげ始めました。
楽しかったはずの「さんすう《の学習で、初めてつまずいた子どもたちとの、「ひきざんのがくしゅう《の取り組みを報告します。

2年生 「文章問題づくりの取り組みから《 :岩ア 公慈(東京)
文章問題を作り、解き合う活動を日常的に行う中で絵や図、テープ図に表すことになれ、複雑な構造の問題にも意欲的に取り組んでいった例を紹介します。家族の様子があらわれる作問、国語や生活、体育の学習場面を題材にしたもの、友達の吊前が登場するもの、様々な問題に取り組みました。答え合わせをする中で、音読や式のたて方、計算の手順についても指導した記録もあわせて報告します。

1年 いくつといくつからたし算へ :田中 純江(東京)
 38人の子どもとの生活は算数の授業へたどり着くまでが大変です。しかし、数の分解合成の授業の頃から子どもがのりのりで授業に取り組むようになりました。そして迎えたたし算のお話作りでは、子どもの思考と技がたくさん詰まった作品が出来ました。これを見てますます子どもがかわいくなりました。

「つくる《という活動を通して、「時間《の学習にせまる :青柳 佳子(東京)
1・2年生と、「マイ時計《を作ることで、同じ原理やしくみを学び、自分だけの時計を完成させました。時計を作る過程で、どんな算数を学習できたのか報告します。


小学校中学年・少人数
中年生  :北見 眞弥(東京)
○「角《は連続した量です。量の指導は、直接比較や間接比較を経て、任意の単位、普遍単位と進むことが多いですが、これは「角《の指導にも当てはまるのでしょうか?また、「角《ならではの難しさはないのでしょうか?そうした疑問から始めた実践について報告します。 ○また、1つの実践を、「角認識《と「友達とのかかわり合い《という二つの視点で分析してみました。

4年生 計算のきまりを調べよう  :小林 千夏子 (神奈川)
子どもたちにとってわかりやすく考えられるよう、教科書に載っている学習の順序を変えて学習を進めました。また、子どもたちの身近にあるものを実際に使って導入を行ったことにより、一人ひとりが生き生きと問題に取り組み、計算のきまりについて理解を深めていくことができた実践を報告します。

葉っぱのブローチ  :山本 佐江(東京)
 森川幾太郎先生に見せていただいた葉っぱのブローチの写真に魅せられて、先生に教えを乞い、小学校3年生で実践しました。材料は、書道用紙と手芸用細針金のみ。一見図工に見えたり、理科や生活科に見えたりするのですが、算数として実践したいと思い、そこのところを幾太郎先生に丁寧に指導していただきました。自分の学級だけでなく、隣のクラスも巻き込んでやれました。またOJTとして職場の同僚もブローチ作りを楽しみました。


小学校高学年・少人数
活動を取り入れた「体積《の授業  :常山 幸子(東京)
 6年生は忙しい。行事の合間を縫って「体積《の授業に活動を取り入れた。チャレンジした課題は「同じ大きさの紙を使ってできるだけ大きな体積をつくろう《である。試行錯誤しながら、体積の中からたくさんの工夫や発見があった。算数に楽しさが感じられるような授業を少しずつでも工夫していきたい。

分数のかけ算とわり算  :中村 真也(東京)
分数の割り算を指導するにあたって、単に「ひっくり返してかける」という形式的な方法を教えこむのではなく、既習事項を生かした指導を計画していきました。 小学校算数の集大成である単元を、子どもたちの視点に立った授業に作り上げていきました。その実践をご報告いたします。

2・3年箱の形と4〜6年直方体立方体の授業提案 :杉岡 美智子(東京)
新教育課程移行期に当たり、指導内容が大きく重複している図形領域についての提案です。 「3年箱の形《は今年度2年生でも扱い、4年5年6年が同時に「立方体・直方体《の授業を進めることになりました。 授業の準備と展開次第で、子ども達の意欲は高まり算数が楽しくなります。 これまで行ってきた6年の授業報告と合わせて、立体のイメージをつかんでいく準備と方法を提案します。


中学・高校
中学校2年生 連立方程式  :三戸 学(秋田)
“生徒といっしょに 先生方といっしょに みんなといっしょに” 連立方程式の利用で,課題解決の場面に生徒同士の共同的な学び合いを中心に据えたジグソー学習の手法を取り入れた。いくつかの課題解決の中から1つの課題解決の方法を選び,その解決方法の見方や考え方を数学的な表現を用いて,説明し伝え合う場面を設定することで,数学における言語活動の充実を高めようとして実験的に試みた提案授業の報告である。

「伝えあう場面を通して数学的考え方を伸ばす授業展開の工夫《 :三森 裕史(神奈川)
第1学年:文字式の導入
文字概念のスムーズな導入と文字を使うことの良さを引きだすことをねらいとして、マッチ棒を利用し、グループ活動を行いながら、法則の定式化を目指した授業展開
第2学年:合同と証明のまとめ
フリーソフトGCを利用し、動く図形に隠された性質を視覚的に捉え、変化をつかみ、性質の発見と証明の必要性に目を向けさせることをねらいとして行った授業展開 上記の実践について発表する。

 

<8月9日(日)午後の部(大会2日目)>

◎授業づくり分科会(I〜O)

I 小学校1年 くり上がりのたし算  :齋藤 有希子(山形)
 1年生の子どもたちにも、「みんなと一緒に勉強するのって楽しい。《とたくさんの場面で感じてほしいものです。「こうしたらできそうだよ。《「なるほど。《……子どもたちなりの言葉で考えを出し合いながら、楽しく『くりあがりのあるたし算』を学ぶことができるような授業作りを、みなさんと考えていきたいと思います。

J 小学校2年 大きな数  :大迫 喜美子(福岡)
 さまざまな具体物を、実際に数える体験を重ねることで、「十進位取り《の意味を体感すること、「十のかたまり《をつくって数えることになじんでいくことの手だてを工夫した。
 また、低学年の数直線の指導として、点の連なりとしてのイメージが重なるよう、具体物を一直線に並べて線とみたり、「数のかたまり《が線上の区切りで表されることを、とらえやすくなる手だてを工夫した。私の授業報告を参考に、皆で授業案づくりをしたいと思う。

K 小学校3年 かけ算 :下野 紀久雄(東京)
3年生のかけ算筆算では、2位数×1位数2位数×2位数の筆算が登場してきます。 筆算の仕方を理解させるのはもちろんかけ算の意味や特に2位数×2位数の筆算はなぜ、  2段にずらして書かなければならないかを図などを交えながら理解し説明できるようにさせたいです。 そのためには子どものつまずきがどこにあるかを、みんなといっしょに学び合いましょう。

L 小学校4年 〜広さを調べよう「面積《〜 :菊池 敦子(福岡)
 昨年度の実践をもとに、まず「面積《の指導にあたって大切にしたこと。{1.面積に関する実態調査、2.出会わせ方の工夫、3.教材・教具の工夫(実際に活動できるものを毎時間用意して)、4.算数的活動の充実、5.活用力を身につけさせる}等を述べ、実際に使用した教材・教具の紹介をし、子どもの思考過程が見えてきた授業の報告をします。  そして、参加者の皆さんと一緒に「面性の学習って楽しい《と子ども達も自分も思えるような授業づくりを考えていきたいと思います。

M 小学校5年 合同  :森川 みや子(東京)
きっかけ;四角形のステンドグラスあと一つで完成だ。ぴったりとした四角形をはめるにはどうしたらいいかな、角や辺のどこを調べたらいいのかな。 子どもの活動;四角形には4つの辺と角がある。最小限の要素を調べてできる、きちんと決まる四角形は出来るか調べたい。4つの辺と4つの角を全部調べるのは大変だ。少ない条件をいろいろ調べてた結果、分かったぞ。同じ四角形を決める条件が。

N 小学校6年 「拡大図と縮図《  :岩ア 公慈(東京)
改訂された学習指導要領で新しく入った内容です。本年度は移行措置で扱われます。「新しく入った《とはいえ、元年版では扱われていた内容です。児童がどこでつまずき、どんな活動を行うことによって意欲的に取り組むのか先行実践に学びましょう。そして、コピー機やパソコン、ファクスなどが児童の身近にある現在、どんな新しい実践ができそうか、ともに考えていきましょう。

O 中学・高校 2次関数の指導  :佐藤 一 (静岡)
2次関数の指導では、しばしば物体の自然落下運動に代表される重力の影響を受けた物体の運動が導入及び内容部分の具体的教材に用いられる。この場合、運動を観測する観測機器が必要とされる。そのため教室で行うには機材の面、時間の面でいつも実施可能という訳にはいかない。機材と時間的制約を受けにくい、簡単な2次関数(放物線)の静的な学習法を提案する。

◎記念講演 「私をきたえてくれた子どもたち《 :近藤 澄子(三重)
 この春、少し早く退職しました。みなさんがそうであるように、思えばいろんな出会いのあった31年でした。ハプニングもたくさんありましたが、たくさんの方に支えられて何とか乗り切ってきたと実感しています。
 思いもよらぬ企画が降りかかってきて大変戸惑っていますが、突っ走ってきた現職生活を振り返ってみる機会を与えていただいたので、その一端をお話できたらと思います。おおよそ、次のような話を予定しています。
 1 新米教師、一人前のつもりは自分だけ!???
 2 十年後に結果が突きつけられる
 3 こんなはずじゃなかったのに〜我が子はむずかしい
 4 勤務地域が変わった戸惑い〜数実研との出会い
 5 まさか私が?〜乳ガン見つかる
 6 チームとして動くことで、教師が育つ、子どもが育つ  

◎まとめの会  大会準備委員会
 2日間の大会を振り返り、成果を確認しましょう。日頃のサークルの実践を伝え、広めることはできたでしょうか。知り合いは増えたでしょうか。新たな出会いは学習の輪を広げます。明日からの実践に意欲を持ち、締めくくりたいと思います。まとめの大会準備委員会からは、参加した皆様に、ただただ感謝申し上げます。


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